【怒りっぽい彼女】
その5
お誕生日おめでとう、と言いながらプレゼントを渡したら、彼女は目を大きく見開いて固まった。

「…………」
「……」

それから2分くらい、彼女は動かないどころかまばたきすらしなかったのだけれど、やがて、

「あ、ありがと」

小さい声で言って、受け取ってくれた。

その後は……何故か彼女はまったく僕の方を向いてくれず、ほとんど喋らず、喫茶店を出てから彼女の家まで送っていく途中も、ずっと静かなままだった。

……サプライズのつもりだったけど、また怒らせちゃったのかな。

声をかけづらい雰囲気のまま別れ、僕は少々沈んだ気持ちで、自分のアパートまで帰った。

……少し時間を置いて、寝る前にでもメールで謝ろうか。

とか、僕は1人、帰り道にぼんやり考えていたのだけれど……アパートに着いてすぐくらいに、彼女の方からメールが来た。


──次の休みの日に、料理作りに行ってあげる。お腹すかせて待ってなさいよね。


と、いう内容だ。

「……?」

──いいけど、どうしたの、急に?

そう返信したが、返事はまったく返ってこない。

ええっと……

なんだかよくわからないうちに、次の休みの予定が決まってしまった。

彼女は言い出したら聞かないし。僕に拒否権はない。

まあ、別に拒否する気もないけれど。

でも、本当にどうしたんだろ?

首を捻っても、やっぱりこうなる理由がよくわからなかった。

……まあ、いっか。

彼女の手料理が食べられるなら、それはそれで、僕にとってはとても嬉しい事だ。

自然と、顔にも笑みが浮かんでくる。


そして、その日はあっという間にやってきたんだ。




「さあ、来てやったわ! アンタはおとなしくテレビでも見てて! いい、邪魔したらタダじゃおかないから!」

朝早く、でかい荷物を抱えて僕の住むアパートに現れ、問答無用でそう告げると、たいして広くもないキッチンを占領して、さっさと調理を開始する彼女。

「……ええと……」

その背中からはいつにも増して迫力というか勢いというか気迫というか……色々と感じられて、言われなくても話しかけるのが少々怖い。

が、それでもやっぱり気になったし、僕はおずおずと、邪魔にならない程度に、とりあえずは料理の素材やメニューなんかについて、尋ねてみる事にしたんだ。