【仕事人百景】
便座職人 編
俺はこの道25年の便座職人だ。ああそうだ、便座だ。便器の上にあるあれだ。お前さんの尻を乗せるあれだ。

たかが便座と侮らないでくれよ。大人から子供、男と女、日本人と外人、さまざまな尻がある。人間の尻なんて、ひとつとして同じ形のものなんざないんだ。だがな、俺の手にかかれば、どんな奴の尻にだって、ぴったりフィットする便座が出来上がる。形、尻触り、色、柔らかさ、材質……なんだって欲しい奴の希望に合わせてみせるぜ。それがこの俺、便座職人一筋25年の意地と誇りだ。

大体便座は毎日使うものだろ? 大事に思わないほうがどうかしてるんだ。それがわからない奴が多すぎる。

一度でいいから、俺の作った便座に尻を据えてみるといい。俺の言っていることが分かるはずだ。

ありがたいことに、俺の作った便座じゃなきゃあもう尻が満足しないとまで言ってくれる上得意もいる。

俺はそんな人達のために、今日も丹精込めて便座を作るのさ。