【仕事人百景】
醤油の容器職人 編
ワシはこの道40年の、醤油の容器職人じゃ。

ほれ、よくお弁当に魚の形をした醤油入れが入っておるじゃろう、あれをこさえておる。

……なに? たかが醤油入れ、じゃと?

何を言っておるか、物の真理も解せぬこわっぱ共め。

よいか、そもそも醤油入れの歴史は、弁当というのものの文化が生まれた平安時代にまで遡る。平安京の貴族達が、醤油の入れ物にまで典雅を求めて魚の形にしたのが発祥なのじゃ。以来1000年、我家では代々一子相伝でその技法を受け継ぎ、守ってきた。歴史と伝統、優雅さと実用性を高め、極めるべく、1000年以上も己の技をひたすらに磨いてきたのじゃ! それをたかが醤油入れなどと抜かすでない!

……どうじゃ? 少しは分かってくれたかの?

単に伝統を重んじるだけでなく、最近の流行なども柔軟に取り入れておるぞ。容器の形も、希望の魚があれば、その形で作っておるし、大きさも望むがままじゃ。1000年の間に培われてきた伝統技法で、必ずやお主が恋焦がれるほどの醤油容器をこの世に顕現させてみせようぞ。

中にはもうワシの作った醤油容器でなければ体が受け付けぬという者や、ワシの作った醤油容器でなら何ガロンでも醤油を頂けると言うものまでいるくらいじゃ。ありがたい事じゃな。

今日もワシは、そんな者達のために、せっせと醤油容器をこさえるのじゃよ。ほっほっほ。